黒毛和牛上塩タン焼680円

昨日過密なスケジュールを終え、疲れ果てた僕の元に一通のメールが届いた。


  件名:これってどんなんよ

  本文:大塚愛の新曲がよみうりテレビ・日本テレビ系アニメ「ブラック・ジャック」
      エンディングテーマ に決定!10月11日からのオンエアを乞うご期待!
      新曲「黒毛和牛上塩タン焼680円」


どうやら大塚愛の曲が日テレ系アニメ「ブラック・ジャック」に
タイアップされたらしく、その新曲のタイトルが上記の通り
「黒毛和牛上塩タン焼680円」だと。

「黒毛」かつ「和牛」しかも「上」の塩タンで680円という辺りが
実に微笑ましくもあるのだが、そのタイトルから
どんな曲が飛び出してくるのかイメージ出来ない、というのが
このメールの主の悩みらしい。

ということで僕がその悩みを解消してあげました。


―――― 新曲 「黒毛和牛上塩タン焼680円」 ――――


「ねえどうしたらいいんだろう…」

「俺に聞かれても分からねえよ!」

サトシは烏の濡れ羽のように真っ黒な毛に覆われた前足で
足元のシロツメクサを蹴った。北海道バターのCMに出てきそうな程
見事なぶち模様のトモコは、サトシの苛立ちが自分のせいではないと
分かっていながらも複雑な心持ちでため息をついた。

今日二人は…いや二頭はトモコの親に挨拶に行った。
二頭の婚約を認めてもらいにである。
真摯で紳士な態度で挨拶をするサトシに対し、
トモコの父トオルは終始渋い顔であった。サトシの決め台詞、

「トモコさんの牛乳を絞らせて下さい!」

の言葉にようやく返した言葉は

「おっと礼拝の時間だ。悪いが今日は帰ってくれ」

だった。

府に落ちないサトシ。だがトモコにはその理由が分かっていた。
しかしそれはサトシに話すことで解決できる類のものではなく、
逆にサトシを徒に傷つけるものだった。

雑種な生まれのサトシに対してトモコの家系は由緒正しきブチ家系。
ブチ牛界では長いブチをかたどったその家紋を知らないものはいないだろう。
血統の確かさはトモコの見事なブチと毛並みを見ても分かる。

ある種サトシがトモコに惚れた理由もそこにもあった。
サトシにとってそのブチと毛並みは非常に官能的だった。
ぶっちゃけブチ模様を思い出して五回マスターベーションした。
それ故の現状とは何という運命のイタズラだろう。

トモコはその小さめな体の中にそれらの悩みを必死で閉じこめていた。

「ふぅ…」

もう何度目のため息だろうか。このため息に自分を乗せて
あの雲の上にまで昇っていきたい。とりとめもなくそんなことを考え
現実逃避をしていたトモコはサトシの声で我に返った。

「トモコ。こっちへ来てくれ」

ズンズンと歩みを進めるサトシ。その目は強くも危険な輝きを放っている。

「ねえ、どこに行くの?」

「すぐに分かる」

サトシが歩を止めたのは焼却炉の前だった。
焼却炉自体は使われていないようだが、その前にはいつもたき火がある。
例外なく今日もたき火は煙を吐き出しながら燃え盛っていた。

「俺…分かってるよ」

火は吹く風に合わせて揺らめき踊る。

「俺とトモコでは身分違いだなんてそんなことは最初から分かってた。
でもだからこそ自分を止められなかった。
俺はトモコから溢れる気品や優しさ、純粋さが大好きだ」

「あ…アタシもサトちゃん頼りになるしわんぱくだし大好きだよ!」

優しく愛しい者を見る目でトモコを一瞥し、サトシは続けた。

「ありがとう。だから俺は…俺はこの黒い毛に別れを告げにここへ来た。
 自分の生まれを示すこの黒毛に」

「ど、どうするの?」

風に煽られ一層火の勢いが増したように感じられたのは
トモコの気のせいだろうか。

「燃えたものは灰になり真っ白になるらしい。俺は今からこの毛を燃やす」

「やめなよ!危ないよ!」

「俺に残された道はこれしかないんだ!
トモコと一緒になるためにはこんなもの何でもない!
俺は生まれ変わる!」

言うが早いかサトシは炎に向かって駆けだしていた。

「サトちゃん!!」


―――― 全米NO1に輝いた新曲 黒毛和牛上塩タン焼680円!!
                       誰もが皆涙する!  ――――



携帯でこんだけ打つのはもっと疲れました。
送信した後気絶するかの如く眠りに入った僕でした。

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